あなたの身近に、死別で苦しんでいる人はいますか?
あなたが看護師さんや看護学生さんなら、あなたの受け持つ患者さんが最期を迎えたら、ご家族にはどんなふうに関わりますか?
看護師は患者さんが亡くなったら、もう何もしなくていいのでしょうか?
出来ることはないのでしょうか?
私は出来ることがあると思います。
私の義母は2013年に亡くなりました。
一人息子である夫は「後を追ってしまうんじゃないか。」と思うほど、悲しみに打ちひしがれていました。
毎日、義母の遺影の前で泣いていたのも知っています。
気分転換に美味しい物を食べれば、「お母さんにも食べさせてあげたかった。」と泣かれたこともありました。
そんな母思いの夫も、2021年に亡くなりました。
だから私は、死別で苦しんでいる人の悲しみも、身近な人の戸惑いも分かるのです。
私は看護師になって約10年ですが、病棟での経験は短く、10年のほとんどは内科クリニックに勤務しています。
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ご遺族に対して、具体的に何が出来るんだろう…?
そう思っている時に、この本を手に取りました。
義母と夫を亡くした遺族でもあり、看護師でもある私が、この本で得た学びをご紹介します。
グッときたところベスト3
1位 Not doing but being
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近代ホスピスの母と呼ばれる英国のシシリー・ソンダースは、死にゆく患者や家族にたいするケアの原点は、”Not doing, but being”であると述べている。すなわち、なにかをするのではなく、その人とともにいることが基本であるというのである。
死別の悲しみに向き合う 著:坂口幸弘
最期を迎えた患者さんのご家族に、あなたはどう接しますか?
死別したご家族が感じているのは、自責の念と絶望です。
精一杯看病したとしても、
「違う治療法を選んでいたら…。」
「もっと早く受診していたら…。」
など、自責の念を感じています。
これから始まる患者さんなしの人生。
夫を亡くした妻なら、一家の大黒柱を失って、これからの生活に不安を感じているでしょう。
妻を亡くした夫なら、毎日の食事や洗濯などの家事が出来るのだろうか、と心配になっているかもしれません。
私は仕事をしているので、夫がいなくなっても経済的な不安はありませんでした。
一番辛かったのは、「何でも話せる相手がいなくなってしまった事」でした。
夫は、夫というだけでなく、一番の理解者であり、何でも話せる親友でもあります。
今まで私を理解し、励まし、慰め、笑わせてくれていた夫がいないという事は、絶望でしかありません。
そんな時に「元気を出して。」と言われても全く心に響きませんでした。
心から泣けたのは葬儀に来てくれた親友が、私の顔を見るなり抱きしめてくれた時でした。
遺族は、あなたに何かをしてほしいのではないのです。
ただ、一緒にいてもらいたいのです。
2位 ともに悲しむ
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言葉はなくても、ただそばにいて、ともに悲しむだけでも、ときに遺族の救いになる。夫を亡くした五十代の女性は、「私の話を聞いていっしょに泣いてくださる方がいると、それだけで力づけられました」と話されていた。
死別の悲しみに向き合う 著:坂口幸弘
私は内科のクリニックに勤務しています。
ある日、外来にいらした80代の女性の問診を取っていました。
その患者さんは、両足に火傷をしたと言います。
どうしたのかと聞くと、「夫が亡くなって、一人でこたつに入ってテレビを見ていたら、もう話す人がいないんだな、と寂しくなってしまって…。」と答え、ポロポロ涙をこぼされたのです。
その様子を見て、私も思わず涙がこみ上げてきました。
「看護師が仕事中に、しかも患者さんの前で泣くなんて!」と思いましたが、涙が止まりませんでした。
「患者さんの方が何倍もお辛いのに、すみません。」
でも、その患者さんは私の手を取って、「一緒に泣いてくれてありがとう。」と言ってくれました。
看護師が仕事中に、患者さんの前で泣くのは、看護師として失格かもしれません。
でも、看護師も人間です。
堪えきれない涙は、流してもいいのではないでしょうか?
3位 気に掛ける
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自分を気にかけてくれている人がいると思えるだけで、人は安心できる。死別した人の悲しみを代わりに引き受けることはできないが、悲しみの暗闇のなかにいる人をひとりにしないことはできる。
死別の悲しみに向き合う 著:坂口幸弘
遺族は、目がまわるほど忙しいものです。
葬儀をするために、親戚や友人などに連絡して、香典返しは何にするか、遺影に使う写真はどれにするか…など決めることがたくさんあります。
やっと葬儀が終わったら、役所の手続きや様々な名義変更、遺品整理などに煩わされて、悲しんでいる暇もありません。
そんな時、「ちゃんと食べてる?」と簡単に食べられるサンドイッチを差し入れしてもらったり、「いつでも話聞くよ!」とメールをもらったりしたのが、本当にありがたかったです。
あなたの優しい気遣いは、遺族に届きます。
頑張る力になります。
1通のメールでも、1言でもいいんです。
ご家族に声を掛けてみて下さい。
どんな人にオススメなのか
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グリーフケアの本は、遺族に向けて書かれたものが多いです。
この本はそれだけでなく、遺族を支えたい人がどうしたらいいかも教えてくれます。
- 死別で苦しんでいる人の力になりたいと思っている人
- 看取りを経験する看護師
- 老年や終末期に実習に行く看護学生
上記の方には、特にオススメします。
もし、「忙しくて読んでいる時間がない。」という方には、第6章の「あなたの身近な人が苦しんでいたら」という部分だけでも読んでいただきたいです。
まとめ
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あなたの身近な人が死別で苦しんでいたら、あなたならどうしますか?
今までのあなたなら、どうしていいか分からず、呆然と立ち尽くしていたかもしれません。
でも、この本を読んだあなたなら、ご家族にそっと寄り添うことが出来るでしょう。
ケアの原点は「Not doing but being」。
何かをするのではなく、苦しんでいる人と共にいることが基本だからです。
気の利いた言葉や、励ましの言葉は要りません。
そばにいて、共に悲しむだけでも、苦しんでいる人の力になれるのですから。
目次・著者のプロフィール・本の詳細
目次
第1章 身近なできごととしての死別
第2章 苦しくてたまらない
第3章 時間はたしかに癒やしてはくれる。しかし……
第4章 死別に向き合うプロセス
第5章 あなたが死別したとき必要なこと、役に立つこと
第6章 あなたの身近な人が苦しんでいたら
第7章 死別の後を生きる
著者のプロフィール
1973年、大阪府生まれ。
大阪大学人間科学部 、同大学院人間科学研究科博士後期課程終了。
現在、関西学院大学人間福祉学部人間科学科教授。
主な著書に『悲嘆学入門ー死別の悲しみを学ぶ』(昭和堂)、共著書に、『グリーフケアー見送る人の悲しみを癒やす〜「ひだまりの会」の軌跡』(毎日新聞社)などがある。
本の詳細
死別の悲しみに向き合うーグリーフケアとは何か
2013年2月1日発行
著者:坂口幸弘
発行者:鈴木哲
発行所:株式会社講談社