採血後のスピッツを見たら、なんか、赤いんだけど…。
採血の結果が返ってきたら、溶血(+)だった…
なんて事、ありませんか?
頑張って採血したのに、溶血して取り直し…なんてがっかりしますよね。
- 溶血を防ぐための注意点
- 溶血すると、影響する採血データ
- そもそも、溶血って何?
溶血について、現役看護師の糖子がお話します。
溶血を防ぐために、気をつける事とその根拠
採血時のアルコール綿は、絞ってから使う
採血時のアルコール綿は、絞ってから使います。
根拠:血液がアルコールに触れると、溶血するからです。
採血をする時、アルコール綿で消毒しますよね?
採血が終わって、針を抜く時、そのアルコール綿で押さえますよね?
その時に、血液がアルコールに触れると、溶血します。
なので、アルコール綿を使う前に、しっかり絞りましょう。
採血する時、アルコールが乾いてないと、消毒効果もないんだよね!
真空管で採血する時は、スピッツを少し傾ける
真空管で採血する時は、スピッツを少し傾けます。
根拠:血液が泡立つと、溶血します。
真空管で採血をする時、スピッツの底に血液が直接当たっていたら、スピッツを少し傾けましょう。
23Gのシリンジで採血する時は、ゆっくり目に引く
23Gのシリンジで採血する時は、ゆっくり目に引きます。
根拠:シリンジを引く時に圧が掛かると、赤血球の膜が破れて溶血するからです。
小児や、静脈の細い人の採血をする時は、細目の23Gを使って採血する事もあると思います。
(通常の静脈採血は、21Gか22Gを使う事が多いです。)
細い針で、ギューギュー引くと、圧が掛かります。
なので、
- ゆっくり目に引きましょう
- 2.5㎖か、5㎖のシリンジを使いましょう
糖子のクリニックには、2.5㎖や5㎖のシリンジはないので、ゆっくり目に引いています。
シリンジで採血して、分注する時は、シリンジを押さない
シリンジで採血して、分注する時は、シリンジを押しません。
根拠:スピッツに血液を入れる時に、圧を掛けないようにします。
スピッツは陰圧なので、放っておけば(数秒ですが)、血液はスピッツに勝手に入ります。
分注する時に、シリンジを押してしまうと、必要以上の圧が掛かって溶血します。
シリンジに残った泡も、スピッツには入れません。
採血後のスピッツを振らない。転倒混和する
採血後のスピッツは振りません。転倒混和します。
根拠:採血後のスピッツを、10秒上下左右に振っただけでも溶血します。
上下左右に振ると、血液が泡立ってしまいます。
血液が泡立つと、溶血します。
ちなみに、正しい転倒混和は
- スピッツの上を持って、くるんと反転
- 1拍おいて、くるんと反転
これを、5回です。
血糖のスピッツは10回です。
採血量が少なかった時は、蓋を外すor針を刺す
採血量が少なかった時は、蓋を外します。
もしくは、針を刺します。
根拠:スピッツ内の陰圧を解除します。
スピッツ内は、陰圧です。
血液の流入が止まるまで採血出来れば、陰圧は解除されます。
でも、採血量が少ないと、スピッツ内は陰圧のままです。
陰圧のままだと、血液に圧が掛かるので、溶血します。
でも、この技は、糖子のクリニックでは誰もやっていません。
蓋を外すのは、血液がこぼれそうだし…。
針を刺すのも、針刺しそうで危ないし…。
なので、先輩がやってれば、やってみる、というスタンスがいいと思います。
データへの影響(影響を受ける採血項目)
上昇するデータ
溶血すると、データが上昇する主な項目は、
- カリウム(K)
- LDH
- AST です。
溶血すると、カリウムは22倍、LDHは200倍、ASTは80倍にもなります。
これらは、赤血球の中に多く含まれているので、赤血球の膜が破れれば(=溶血)、中に入っていた成分が血液中に出てきて、検査データが高くなります。
下降するデータ
溶血すると、下降する主な項目は、
- インスリン
- BNP です。
インスリンや、BNPなどは、赤血球の中にあった蛋白分解酵素の働きで分解されます。
なので、検査データは低くなります。
そもそも、溶血って何?
溶血とは、赤血球の膜が破れてしまう事です。
赤血球の膜が破れると、ヘモグロビン(血色素)が出てきて、血清が赤くなります。
溶血していない、正常の血清は、透明な黄色です。
まとめ:溶血を防ぐために気をつける事
溶血する原因は
- 採血時の手技
- 患者さんの疾患(例:溶血性貧血)
のどちらかです。
疾患があるかないか判別する為に、採血時の溶血は避けたいですね。
採血が難しい患者さんもいますからね…。
最後に、おさらいです。
- アルコール綿は、しっかり絞る
- 23Gのシリンジで採血する時は、ゆっくり目に引く
- もしくは、2.5㎖や5㎖のシリンジを使う
- 血液の量が少なかった時は、蓋を外すか、針を刺す
- 採血後、スピッツに血液を入れる時は、シリンジを押さない
- 採血後のスピッツは転倒混和する
言い換えると、圧を掛けない!という事です。
ゆっくりし過ぎると凝固するので、ほどよい感じで頑張りましょう!